全国金融共闘は9月1日に群馬県伊香保温泉で泊まり込み幹事会を開催し、京都大学名誉教授・京都橘大学現代ビジネス学部教授の岡田知弘氏から「地域金融のあり方とその役割」をテーマに講演を受けました。
泊まり込み幹事会は午後1時から開始し、加盟単産から前回幹事会以降の経過を報告・交流しました。全農協労連は7月13日~14日、新潟県越後湯沢で第117回大会を開催して新年度方針を決定し、新年度役員を選出したことを報告。金融労連は9月14日~15日に東京で第14回定期大会を予定。全損保は9月20日に第80回定期大会、全証労協は9月28日に横浜で第66回定期代表委員会、全信保労連は10月13日~14日東京で第59回定期大会を予定しています。幹事会ではそれぞれの定期大会へ幹事が分担して連帯・激励に訪問することを確認しました。また全損保からは、第80回定期大会と合わせて、結成70周年のレセプションを予定していることが報告され、加盟単産からの参加表明がありました。
続いて、岡田教授から詳細なレジュメに基づいた講演を受けました。そのなかで岡田教授は、「地域」とは固有の自然と一体となった「人間の生活領域」であるとして、資本主義の発展の中で「資本の活動領域」が「人間の生活領域」から乖離して拡大していった歴史を紹介しました。そのうえで、「グローバル経済」時代の産業空洞化はその矛盾の典型であるとしました。(レジュメ)
日本の戦後の地域開発政策は、1960年代の「新産業都市構想」から、リゾート開発にいたるまで、拠点への投資の集中が周辺産業・地域をも潤すという「トリクルダウン」理論に基づいていたが、それはほとんど失敗に終わったと説明。大型公共事業+企業誘致型地域開発政策は地域経済への波及効果が少なく、「産業の空洞化」で地方への工場立地が減少・撤退し地域経済が停滞していると解説したうえで、地域発展の決定的要素は「地域内再投資力」を形成することにあると指摘。地域内にある企業、金融機関、農家、協同組合、NPO、地方自治体が地域に再投資を繰り返し、再投資の規模と質を高めることが求められているとしました。
中小企業基本法が1999年に改定され地方公共団体がその地域の「自然的経済的社会諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する」ことを定め、2000年にはEU小企業憲章で小企業が「ヨーロッパ経済のバックボーン」とされたことを紹介。さらに、日本で「中小企業憲章」が閣議決定され(2010年)「中小企業は、経済を牽引する力であり、社会の主役である」と規定し、地方自治体では「中小企業振興基本条例」の制定が400を超える自治体に広がっていると、地域に根差す経済政策の取り組みの前進を明らかにしました。
そして、中小企業振興条例を活用した取り組みとして東京都墨田区のスカイツリーの経済効果を生かした取り組み、山形県庄内町の住宅リフォーム補助金制度、産業振興ビジョンの議論で農商工と金融機関の連携が強まった帯広の事例など多数の具体的な取り組み事例を紹介されました。日本の新聞・テレビがグローバル大企業の報道ばかりで地域の中小企業の実状や可能性がほとんど報道されないことを批判し、地域の企業や経済の動きを見直すべきことを明らかにされました。
地域再生における地域金融機関と地方自治体の役割については、地域内で再投資力を高めるために自治体、金融機関、民間企業、協同組合等がいかに連携を強化するかが課題になると指摘。協同組織金融機関の可能性と展望として、帯広市中小企業振興基本条例と帯広信用金庫の取り組み、東日本大震災で被災した気仙沼信金の取り組みなど具体的事例を詳しく紹介され、地域に根差した地域金融の可能性を訴えられました。
講演の最後に、米国で「地域力をつける労働運動」が広がり、地域で最低賃金、医療、福祉教育の前進・充実を目指す住民運動と労働運動のコアリッション(coalition=連合・連携)創出が進んでいることを紹介され、地域社会の中で労働運動の果たすべき新たな役割を示唆されました。