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○岩手県農協労組が「地域の農業と暮らしを守るシンポジウム」
 を開催【全農協労連】

昨年12月に岩手県花巻農協管内で開催されたシンポジウム

昨年12月に岩手県花巻農協管内で開催されたシンポジウム


支店・支所統廃合に農家、地域住民から懸念の声

 全農協労連発行の雑誌「労農のなかま」1月号は、「2020年春闘特集号」として、春闘の課題を提起し解説しています。「春闘のポイント」では、○賃金闘争にどう取り組むか、○同一労働同一賃金に向けて、○長時間過密労働の解消へ、など7つのポイントを解説し、その中で農協の再編・合併、支店の統廃合に対する全農協労連の取り組みが報告されています。



地域や農家と一緒に考える場をつくる

 「支所・支店の統廃合の課題」について岩手県農協労組の村田浩一書記長は「地域や農家と一緒に考える場を作り、農協らしい運営へ」をテーマとした、岩手県花巻農協管内で開催したシンポジウムについて報告しています。岩手県では農協の支所・支店の統合が進められ、花巻農協でも今年3月に「大きく支店が無くなる」状況(インターネット上で7つの支店が3月2日で「移転」すると告示されている)です。同労組は県内の農協施設の統廃合計画が「提案から決定まで非常に短期間で、農家だけではなく地域住民や行政からも懸念の声が上がっている」ことを受け止め、昨年12月1日に「地域の農業と暮らしを守るシンポジウム~農協の支店統廃合問題から考える」を開催しました。



「統廃合ありき」で「ちゃんとした説明がない」

 岩手県農協労組はこの集会を「農協や労働組合の内部の問題にとどめずに、農家や地域の人も交えて話し合う場を作っていかなければならない」と位置づけ、いわて労連、地域労連、自治労連、農民連などに呼びかけて実行委員会を作り議論を重ねました。シンポジウムには60名が参加し、岩手大学の横山英信教授から基調報告を受け、現地からの発言として農家組合員、農協職員、地域の消費者の発言を受けました。現地からの発言では、支店の統廃合が説明から5ヵ月足らずの総代会で決定され、農家組合員から「ちゃんとした説明がない」と指摘され、農協経営者の説明は「統廃合ありき」で、農家の不安に応えているか疑問だとされています。  村田書記長は、同報告で先に統廃合を実施した別の農協経営者が、統廃合しても「コスト削減の効果は出ていない」と発言していることを紹介。「だから職員が頑張ってくれ」と職員に責任を転嫁することになると指摘し「労働組合が農家とつながって経営者と対峙する姿勢を作っていかなければ農協自体が縮小し、地域も支えられない」と訴え「農家と一緒になって運動を作っていかなければならない」ことを痛感したと報告しています。
 この集会は、地元紙の「岩手日日新聞」の北上・花巻版1面トップで取り上げられ、労組花巻支部委員長の発言が紹介されました。



地域金融機関の支店統廃合と共通の問題

 また、同じ「労農のなかま」1月号では、支店・支所の統廃合問題で、農業・農協問題研究所新潟支部の伊藤亮司支部長(新潟大学農学部)の講演記録を掲載しています。その中で、新潟県佐渡市の外海府地区で農協がガソリンスタンド事業の廃止を決定したことに対し、地域住民の反対運動が起こり、農協の決定を覆しガソリンスタンドを存続させた事例が紹介されています。この決定で、10年間の営業が延長されますが、農協側は「10年をもたせるためには430万円のコストがかかる」とし、その4分の1の75万円を地域で集めることができれば、残りを農協が出すとされます。こうした事態に組合員が立ち上がり、集落を一軒一軒周り協力要請した結果、1ヵ月間で75万円を超える117万円が集まり、存続が決定しました。廃止問題以前は、年間利用90キロリットルだったものが、その後では年間120キロリットルの利用に増えたといいます。この地域は、新潟市からフェリーで3時間、さらに港から車で1時間、バスで片道1500円という不便なところに位置します。伊藤支部長は、この事例を紹介して「『これがないと生きていけない』というのが協同の原点であり、『これがあればやっていける』というのが協同のスタートです」と述べています。

 信用金庫、地方銀行など地域金融機関でも、合併・統合の動きが強められ、昨年の金融労連による金融庁要請では、地域金融機関の支店の統廃合(ブランチ・イン・ブランチ)が、金融庁の言う「顧客本位」に反することが追及されました。農業協同組合と地域金融機関を同一に論じることはできませんが、根底で共通する課題に直面していることも明らかです。

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