最高裁弁論の後の報告集会で(2020年9月15日参議院議員会館)
労働契約法20条は、契約社員やパートタイマーなど非正規労働者への不合理な差別待遇を禁止していますが非正規労働者への差別処遇はほとんど変わっていません。メガバンクはじめ大手金融機関でも大量の非正規労働者が働き、一時金も退職金もほとんどゼロです。
日本郵政、地下鉄の売店を経営するメトロコマース、大阪医科大学などを相手に差別是正を求めた裁判闘争が、最高裁で審理され10月中旬に判決言い渡しが行われます。9月15日にはメトロコマースと大阪医科大学の裁判の審理が開かれました。その後、報告集会がメトロコマース裁判弁護団の滝沢香弁護士(東京法律事務所)の司会で行われました。
大阪医科大学裁判の原告Mさんは、研究室の秘書として時間給制で勤務し、正規労働者との差別是正を求めて大阪地裁に提訴しました。地裁では敗訴となりましたが、大阪高裁では、Mさんの訴えに、賞与を正規職員の6割支給するべきと認める判断をくだしました。9月15日の最高裁弁論では、弁護団は賞与10割の支給を求めています。Mさんは原告として意見陳述を行い、ご自身の差別された経験を述べ、現在のコロナ禍でも非正規労働者が真っ先に雇止めされている現実を訴えました。
メトロコマースの裁判では、高裁で退職金について正規労働者の少なくとも4分の1を支給しないのは不合理と判断されました。最高裁判決ではこの点が判断されます。
報告集会で原告のKさんは、「売店を支えてきたのは私たち有期雇用労働者。それによって会社は経営が成り立っている。そんな私たちを会社側は『調整弁』と言い切った」と批判。原告のHさんは「小さな売店で、早番・遅番の二人体制。空気の悪い地下鉄構内で長時間、販売から売上金の管理、清掃すべてやりました。私たちが働くから会社があるのでしょうと言いたい」と発言し、「私には孫がいます。次の世代に少しでも良いものを残すために頑張ります」と決意を表しました。4人の原告の中で常に積極的に発言するUさんは、「6年前の5月1日に提訴し、その後日本郵政のなかまが提訴して、西日本に呼ばれた時に大阪医科大学のMさんにお会いしました。6年間、労契法20条の闘いをみんなで闘ってこられたことが一番良かった」と振り返り、「6年間闘って分かったことは、声を上げた人を絶対に孤立させてはいけないということです」と強調しました。
メトロコマース支部の加盟する全労協全国一般東京東部労組の須田書記長は、「同じ仕事をしていてこんなに賃金が違う。これは差別以外の何ものでもない。是正ではなくて撤廃を求める」と差別の撤廃を訴え、撤廃を実現するためには「非正規労働者が団結して立ち上がる。非正規差別をなくすのは労働者の団結であり、労働運動の力だ」と呼びかけました。
同じく労契法20条裁判を原告として闘っている郵政産業労働者ユニオンの浅川さんが日本郵政の闘いについて報告しました。
10年前、民主党政権で亀井大臣が郵政に働く10万人の非正規を正社員化すると言ったが、高いハードルがもうけられ、多くの非正規労働者が正社員になれず郵政の職場を離れていった。その後、労働契約法20条が施行されて、労働者が使える法律ができた。差別是正に立ち上がろうと組合が呼びかけ、私が「失うものは何もない。私がやります」と声を上げたところ、11人が集まり原告となりました。労働契約法20条に手探りで取り組み、一歩一歩判決をかち取ってきた。高裁判決が期間雇用社員へ住居手当を支給しないのは不合理と判断した。この判断に対して、会社が最高裁へ上告したが、この上告は受理されず、住居手当の支給はすでに確定している。扶養手当については、大阪地裁で認められ高裁で負けてしまったが、最高裁は労働側の上告を受理しています。従って扶養手当も認められる可能性があります。
浅川さんは以上のように説明し、最後に「10月に最高裁の判決が出ます。それを新たな出発点として非正規でも安心して働ける社会にしたい」と最高裁判決後のさらなる闘いを呼びかけました。
郵政ユニオンは、今年2月に非正規労働者154名を原告として第2次の集団提訴を行っています。以下の関連記事を参照。
<関連記事リンク>
労働契約法 20 条裁判をたたかう郵政原告団を支える会ニュース
http://piwu.org/sasaerukai30_20jyou.pdf
日本郵政20条裁判――154人が集団提訴!
https://www.minpokyo.org/journal/2020/04/7094/
9月15日の報告集会については以下を参照。
http://www.leaf-line.jp/~iflj/?p=4008