金融庁に要請を行う金融共闘
11月27日、全国金融共闘は秋の統一行動として金融庁への要請を行いました。要請は事前に提出した金融担当大臣あての要請書に対して、金融庁から回答を受け、要請団からの質疑とそれに対する回答を受けました。
要請書では、金融自由化の下で過当競争が広がり金融機関は利益第一主義を強め、顧客と従業員を犠牲にし、組合員から「消費者のためになっていない」という声が出されていることを指摘。金融各業態が真の意味での社会的役割を果たせる金融機関への再生が必要と訴え、具体的に5項目について要請していました。 金融庁への要請書
要請項目1では、自由化・規制緩和によって金融機関が社会的役割を果たすことが困難になっているとして、金融庁の見解をただしました。これに対し、金融庁は、金融機関が金融仲介機能を発揮して企業、経済の持続的な成長が求められると従来の回答に終始しました。
要請項目2で、日銀のマイナス金利政策が金融機関の経営を困難にしていることについて見解をただしました。金融庁は、金融機関の経営が厳しいのは認識しているが、その要因は低金利だけでなく、人口減少、コロナ禍の影響、海外経済の動向など様々な要因の影響を受けており、日銀はそうした様々な要因を検討し金融政策を進めていると考えられる。金融庁としてはモニタリングや対話を通じて自主的な経営改善を促し、規制緩和等で持続可能なビジネスモデル構築の環境整備を行っていくと回答。
要請項目3では、コロナ禍の下の職場の問題として、各金融機関で在宅勤務をすすめているが、それが労働者の負担となっている実態を訴えました。それに対して金融庁は「在宅勤務等は各金融機関の経営判断による」としつつ、金融庁に提出する書類で押印不用とするものは指定し、メール提出も可とする新システムに移行することとなっており、意見交換の場を設け在宅勤務を進めやすい環境を作っていきたいと回答しました。
要請項目4では、信用失墜につながる金融商品のノルマ的販売を行わせないよう指導することを求めました。金融庁は金融機関の「顧客本位の業務運営」の浸透・定着に向けて対話を進めているとし、こうした取り組みが信頼の失墜をもたらすノルマ的販売の規制につながると回答しました。
関連して要請団から「金融商品の販売実態の改善指導を行うこと」を求めました。これに対して金融庁は、顧客本位の業務運営に関する原則は、従業員が顧客の最善の利益を追求し、利益相反を適切に管理する報酬・業務評価体系の整備を求めており、顧客の意向やニーズに沿わない特定の商品に偏重することがないよう従業員の動機づけを求めていると回答。さらに、消費者ローン、カードローンについて顧客の理解が得られるように説明することが求められ、顧客に的確な情報を提供しているかを監督指針にも掲げていると説明しました。
金融庁からの回答を受けて、要請団は、この数年間、銀行において各種手数料の、引き上げが行われているが、顧客にはお知らせが行く程度で、理解できる説明はされていないのではないか。利用者は引き上げに対応するしかないのが実態だと問題点を追及。また、異常な低金利政策が原因で、手数料で稼がなければならなくなっているとし、日銀の低金利政策に金融庁がものをいうことは難しいとの説明だが、金融庁は金融機関を保護する立場にもあると指摘し、金融機関を守っていく施策の検討を求めました。
また在宅勤務について、損保の大手は5割から6割出社くらいにしているがそれは金融機関として適切なのかどうか。そういう金融機関の在り方をどう考えているのかを問いただしました。これに対しては、顧客利便、顧客保護の観点から対話させていただき、対応を考えていると回答がありました。金融労連のアンケートでは職場実態の不安・不満として「要員が足りない」と半数以上が訴え、「リスク商品等のノルマの追求」に多くのなかまが不満・不安を感じている実態があると指摘。菅首相が「地銀の数が多すぎる」「再編も一つの選択肢」と発言し、再編をすすめようとしていることに対して「再編しなくても地域で役立つ金融機関として存在し続ける政策を打ち出すべきだ」と要請しました。
最後に、金融庁がモニタリングや対話を行っていることに対しては、「金融機関経営層だけではなく現場の労働者の声を聴くべきだ」と強く要請しました。