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○コロナ後の金融のあり方について研究会開催

金融労連、金融ユニオン他が参加
金融・労働研究ネットワーク主催

 新型コロナウイルスの感染拡大で、緊急事態宣言適用地域が拡大されています。長期化するコロナウイルス感染で中小企業は限度額いっぱいまで借り入れが膨らみ、中小企業金融機関の職場にはコロナ後のあり方への懸念が広がっています。8月1日、金融・労働研究ネットワークはコロナ禍の中小業者への影響について研究会を開催しました。



「コロナ禍で期待される協同組織の役割」をテーマに講演

 研究会は、ZOOMを使って行われ、金融労連、金融ユニオンなど金融労組、中小企業家同友会、全商連など業者団体、労働総研、政治経済研究所などから18名が参加し、日本大学の平澤克彦教授から「コロナ禍で期待される協同組織の役割」をテーマに講演を受けました。
 平澤教授は講演でコロナ禍が日本経済と労働者・中小企業にどんな影響をもたらしているかを解説。労働者・中小業者への影響としては、失業者と休業者が増加していることを指摘。とりわけ「休業者」や「休廃業」の多いことを示し、今後の事業承継問題も懸念されるとしました。飲食店が営業自粛を要請される状況に対して、信用金庫が金庫内の職員向け食堂を一時休業して、地域の飲食店からのテイクアウト推進に協力し、別の地域では業者団体が地域内でテイクアウト可能な飲食店のマップをホームページで推奨するなど、業者に寄り添って支援する事例も紹介されました。
 講演の後半ではドイツにおける協同組織金融の経緯を解説。ドイツでは大企業の発展と並行して中小零細企業が衰退していく中で、中小零細企業の協同組織化が進み、日本の信用金庫に相当する協同組織金融が形作られた経緯を説明。また大企業に対しては地域経済への貢献がCSR(企業の社会的責任)として求められ、フランスでは、1000人以上の大企業がリストラを行うときはリストラ人員1人当たり2000ユーロ(260000円)を地域の振興に拠出すべき義務が定められていることを紹介し、日本のように「中小企業は生産性が低いから淘汰する」のではなく中小企業の存続を支える政策が進められていることを説明しました。
(講演資料「コロナ禍で期待される協同組織の役割」)



金融行政の矛盾した政策

 講演終了後の参加者の討論では、中小企業家同友会全国協議会(以下、中同協)の平田美穂さん(政策広報局長)から、国の政策への要望・提言の中から金融問題について説明されました。平田さんはその中で①「伴奏型の支援融資」として中小企業に専用当座貸越枠をつけること、②中小企業に対する資本性ローンとして永久劣後ローンを考えてほしい、③『経営者保証に関するガイドライン』の活用促進を図り人的保証に依存しない金融制度を確立するなど中同協の要望・提言を説明。
 この中同協からの提言に対して金融労連の中島委員長は「金融庁は金融機関に中小企業支援を求めるが、リーマンショックの時、貸し渋り貸しはがしが発生して2009年に金融円滑化法ができた。その時、過去に不渡りを出したところも支援しなさいと言われたが、1年くらいすると『支援するしないは個別金融機関の判断で決めなさい』というように変わって行政は関知しないとなってしまった。今回コロナが収まった後、中小企業にどう対応するのか、労働組合として行政にどんなメッセージを出すようにと要請するか考えているところです」と説明。
 さらに「金融庁からは、持続可能なビジネスモデルを確立し収益を上げろと言われる。一方ではマイナス金利政策と地域経済の疲弊から地域金融機関は再編統合しろと言われている。結果として、収益に直接結びつかない中小企業支援には距離感がある。例えば資本性ローンに取り組み、取引先の経営が改善してそこから地域経済が良くなるという考え方が今の銀行には欠落しているように思う」と金融行政の要求が矛盾していることと、地域金融機関の現状が出されました。



経営者団体、自治体、労働組合を含めた地域共闘が求められる

 金融ユニオンの浦野さんは「平田さんが言われた三つの形の提言は、優良企業に対しては金融機関もすでに実行している話です」と説明し「上場企業などに対しては、当座貸越枠も拡大して融資先を確保し、資本の注入も実行している…そうした融資をどういう経営実態のところにまで広げるのかが大きな課題になるだろう」と指摘。「優良企業に対して既にやっている融資等をどういう層にまで広げていくのか、膨れ上がった貸出しをどういう形で平常の返済に戻していくのか、が大きな課題となる」と発言しました。
 こうした金融労組からの発言に平田さんからは「優良先という中小企業のウエイトは少ないのではないか。中小企業が元気になる必要性の議論を含めて中小企業憲章とか中小企業振興基本条例の枠組みや理念を明確にして金融のあり方を議論していくべきではないか」と提起されました。
 研究会の議論では最後に、労働総研の金田豊理事から「コロナ後の経済再建を考えるとき地域経済再生の中で金融機関の役割を位置づけるべきで、全労連の春闘方針も、地域経済再生の中で賃上げ実現を考えている。単に銀行や金融機関とその取引企業の関係ではなくて、自治体や経営者団体を含めて地域の総合的な機構で考えるシステムを作るべき。政府の関係省、例えば環境省は地域のCO²対策や環境対策で何をするべきかを考える。いろいろな業種を集め金融機関も入って協議する。大きな地域共闘というか、労働組合や経営者団体を含めた機構が対応できることが必要になる。議論を、個別企業と個別金融機関の枠で考えないで地域全体の取り組みの中で考えていくべきです」と提案がありました。



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