10月29日、全国農業協同組合中央会(全中)は東京都内で、第29回JA全国大会を開催しました。このJA全国大会は、当面する3年間の農協系統としての方針と、10年後のめざす姿を示すことが課題とされていました。これに先立ち10月19日、全農協労連はJA全国大会の開催に向けて、「第29回JA全国大会・組織協議案に対する意見」を全中に提出。砂山委員長らが全中を訪問し、職場の実態を訴えました。合わせて、全農協労連が農業・農協問題研究所に委託した「第29回JA全国大会の議案書分析」の報告書を手渡しました。
全農協労連は「意見書」で、「日本の食糧生産を担う家族農業経営が5年前に比べ30万3千経営体も減少し、家族農業経営と地域農業が存続を危ぶまれる重大な局面を迎えている」と指摘。各地の農協では「広域合併や支所・支店の統廃合、事業の分離・別会社化などの組織改編のなかで機能の縮小を余儀なくされ、農家組合員や地域住民から信頼を失いかねない状況に」あるとし、「慢性的な人員不足に加えて、組織や事業の再編による『合理化』のなかで、いっそう労働者への負担が増加し、系統農協の職場では職員の中途退職に歯止めがかかっていない」と訴え、以下の4点を要請しています。
4項目の要請の中で③について、「いまの支所・支店の統廃合や事業の合理化再編のなかで、これ以上職員請負型の事業運営を広げることはもはや限界」とし「『人づくり』のための何よりの担保は、中途退職に歯止めをかけることであり、労働者への負担転嫁を改めること」と訴え「第29回JA全国大会では、これまでの職員負担転嫁型の『自己改革』を改め、生産部会をはじめとした(農家)組合員組織に力を借りる運営を模索・提起し、職員の過重労働と、労働基準法や労働安全衛生法などの各種労働法違反を一掃すること」を求めています。
さらに、④について「これまで、JA全国大会は、脱原発に向けた循環型社会への取り組みなど、先駆的な方針を掲げることで、幅広い市民層に歓迎されてきた」と指摘し「本大会の役割を経営指南に矮小化することなく、農業・農村ならでは発信できる魅力的な政策と運動を系統組織の内外に示し、国民的な理解と共感を得ていくことを求める」と訴えています。
【全農協労連意見書リンク】第29回JA全国大会・組織協議案に対する意見
これに関連して、農業・農協問題研究所の田代洋一理事長(横浜国立大学名誉教授)はJA全国大会に向けての提言「確信持ち『目指す姿』追求を」を公表しています。田代理事長は提言で「運動体としての農協を取り戻すこと」を呼びかけると同時に、金融庁の早期警戒制度の見直しが、①単協信用事業の農林中金・県信連への譲渡あるいは代理店化、②全農・経済連、農林中金・県信連・全共連の農協出資の株式会社化につながることへの警戒をよびかけています。
【全国農協新聞ホームページリンク】確信を持ち「目指す姿」追求を