金融共闘

トップページ » ニュース一覧 »コロナ禍の「過重債務」問題への支援体制確立を要請【金融労連】

○コロナ禍の「過重債務」問題への支援体制確立を要請【金融労連】

コロナ禍で中小・零細企業が「過重債務」に直面

 12月17日、金融労連は金融庁に要請を行いました。今回の要請は、新型コロナウイルス感染症拡大の下で中小企業への金融支援のあり方の問題を中心に行われました。また、あおぞら銀行で不当に懲戒処分を受け、さらに2階級降格され撤回を求めてたたかっている金融ユニオンの伊藤さんの問題についても金融庁の見解をただしました。


12月17日 金融労連が金融庁に要請

12月17日 金融労連が金融庁に要請


 新型コロナウイルス感染症拡大と、防止のための緊急事態宣言などの施策が中小・零細企業に深刻な影響を与えています。中小企業支援の実質無担保・無利子融資などが進められ、倒産件数は「55年ぶりの低水準」と報じられ減少していますが、その反面中小・零細業者が「過剰債務」となることへの懸念が広がっています。
 政府は11月24日に、「『コロナ克服・新時代開拓のための経済政策』を踏まえた事業者支援の徹底等について」を出状しています。金融労連は要請書で、政府が打ち出している事業者支援の政策を徹底することを求めました。(金融労連の要請書リンク)
 要請の中で、中島委員長は「11月24日付の文書は、私たちが期待することが網羅されてはいる」としながら、「2009年に金融円滑化法ができたが、1年少し経った頃『円滑化法に基づく支援をしない』という事例が発生し、その問題を金融庁に要請したところ『個別金融機関の判断による』と言われた」と金融庁の対応変化を批判。事業者支援を徹底するためには文書(11月24日文書)に明記している「貸し渋り、貸しはがしを行わないこと」などを金融機関に対して強制していただきたい」と訴え、さらに「コロナが収束する方向に進んだ場合も、同様の問題が発生すると思われる。金融庁は事業者を支援する方針を変えないで、資金繰り支援をおこなう必要性が無くなるまで続けていくべき」と重ねて要請しました。


「コロナ禍は自然災害 公的支援の確立が必要」
静岡大学鳥畑教授

 金融庁は11月24日付の文書で、資金繰り支援だけでなく中小企業がどう事業を再生していくかについても金融機関に要請していると説明しました。
 これに対して中島委員長は「構造的に疲弊している地域で経済を立て直すのに、地域金融機関だけの知恵で何とかなるのでしょうか」と疑問を呈し、さらに「そもそも根幹の経済政策が間違っている中で、金融機関任せで何とかしようということに無理があることに気づいていただきたい」と厳しく批判。さらに「逆に、別の目的があるのではないかと思ってしまう。スマートシテイ構想のように地域を縮小して、地域金融機関を残さなくてもいいと考えているのではないかといううがった見方も出てくる」として「地域の中小企業の実態をつかんで、地域の活性化につなげていくことを金融庁としても考えていただきたい」と金融庁の地域金融政策の根本に対する疑問を提起しました。
 要請には、地域金融問題について継続的に金融・労働研究ネットワークの研究会で分析・報告されている静岡大学の鳥畑与一教授も参加しました。 鳥畑教授は「コロナ対策として立派な制度、対応策が上げられている」とし、「例えば、資本性劣後ローンが広がっているが結局は借金で、10年たったら一括返済ということになってしまう。無担保、無保証、ゼロ金利と言っても借金であることに変わりない」として「コロナ収束後の経済の中で、現在積みあがっている『過剰債務』とどう向き合うのかを検討するべきだ」として「これは自然災害だという視点が必要ではないか」と提起。東日本大震災時の二重ローン問題への対応や、債権買取などの経験も振り返り、今回も債務免除をも考慮に入れて、自然災害で苦しんでいる中小企業や経済を守るための公的な支援の拡充を提案しました。


コロナ禍の地域金融機関再編は凍結を

 関連して中島委員長が金融機関に働く立場から以下のように発言しました。
 「鳥畑教授が指摘されたような支援、例えば、資本性ローンなどは収益を当てにして行うものではない。地域の中小企業、事業者を支えるために、あえてしなければならない。そのことが収益に影響を与える。他方で収益を上げなければ地域金融機関の再編につながることになると、金融機関が委縮してしまって事業者支援ができなくなる」と述べて「再編・統合が一つの選択肢として打ち出されたもとで、中小企業支援を積極的に進めるというのは無理なことです」として地域金融機関の再編・統合政策の凍結を求めました。


内部通報制度
徹底した事実調査と通報者保護が不可欠

 あおぞら銀行の伊藤さんの問題について金融庁は、4月、5月にも要請を受け、金融庁としては同行に対して事実関係の確認を行っていると説明。仮に不適切な事案が積み重なっていたり、銀行の経営管理体制=ガバナンスに重大な問題があると認められた場合には法令に即して厳正な行政上の対応をすると回答しました。これに対して、伊藤さんは不当な懲戒処分の直接の原因となった内部通報制度を実効あるものとするためには、①企業内で内部通報された事実が徹底的に調査されること、②内部通報者が不利益処分を受けないことが不可欠であると要請しました。中島委員長は金融庁の「コンプライアンス・リスク管理に関する傾向と課題」(2020年6月)に、伊藤さんのケースと全く重なる事例があることを指摘し、伊藤さんへの処分が金融庁も注意喚起している事例であることを明らかにしました。(金融ユニオンあおぞら銀行問題特設サイト)
 要請には、金融労連本部、同関東地協、金融ユニオン他から12名が参加。衆議院財務・金融委員の田村貴昭議員(日本共産党)が同席しました。

 あおぞら銀行のたたかい 次回都労委調査1月31日1:00~東京都労働委員会にて

このページのトップへ