経営基盤の強化は社会的役割を果たすために
昼休み宣伝(財務省前)であいさつする浦上議長
4月15日、全国金融共闘は金融庁への要請を行いました。この日は「国民のための財務・金融行政を求める2022共同行動実行委員会」による要請行動が取り組まれ、昼休み時間には財務・金融共同行動と全国金融共闘による財務省前宣伝行動が行われました。この日の金融庁と日銀への要請には金融労連の依頼に応じて静岡大学の鳥畑与一教授(金融論)が同席しました。
=昼休み宣伝行動=
12時15分から行われた財務省前宣伝行動では、共同行動実行委員会の九後委員長(国交労連委員長)のあいさつに続いて、全国金融共闘の浦上議長(全損保委員長)が「国民のための財務・金行政を求める共同行動と全国金融共闘との共同の取り組みを3年ぶりに開催できた」とあいさつし「日銀が進めるマイナス金利政策は金融機関に大きな影響を与えている」と指摘。
「金融機関は新規事業領域での収益確保を迫られ、規模や収益の拡大のみを求めた政策を進めている。お客様第一を言いながら収益第一となっていて金融本来の役割を果たすものとなっていない。行政は職場の実態を把握して、実体経済の成長を支える役割を果たすように監督すべき」と訴えました。
金融労連の笹本書記長は、政府・日銀が地域金融機関の再編・合併を進めていることを批判し、「日銀の異常なマイナス金利政策や、大企業優先・地方経済切り捨てが地域金融機関を経営困難に追い込んでいるのであり、そうした経済政策の反省・見直しこそが求められている」と訴えました。また、「金融庁は顧客本位の業務運営を求めているが、地域金融機関は生き残りのため利益追求型の営業展開で過剰なノルマを課し、顧客本位とは言えない実態となっている」とし、「地域密着、お客様本位の経営が求められる中で、従業員がゆとりをもってお客様と話しながら自信をもってセールスできる職場に変えていく必要がある」と訴えました。
昼休み宣伝行動の後、午後2時から全国金融共闘による金融庁への要請が行われました。事前提出の要請項目について、金融庁からは
金融労連の中島委員長は、「金融庁は地域金融機関経営基盤の強化求めるが、どれだけ利益を上げると本来の役割を果たすことにつながるのか」と質し、現在のコロナ禍で貸し出しが増え、利益が出た地方銀行がそれを株主への配当に回していると批判。「本来、一時的に増えた利益は、予想される貸出先事業者の経営困難等に備えるべきなのに、株主の配当に回すのでは本末転倒」と批判しました。
鳥畑教授は、「欧州中央銀行がコロナ禍にあって金融機関は利益を実体経済を支えるために備えて株主への配当に回すことを制限する方針を出し、国際通貨基金でも同種の議論が出ている」と紹介。「日本の地方銀行は利益の3分の1程度を株主への配当に回していて、利益の7~8割を配当に回している金融機関もある」と指摘し、「金融機関本来の公共性、社会的責任を果たすためには株主への配当を規制すべきではないか」と訴えました。
また、中島委員長は金融機関店舗の統廃合が進んでいることについて、「人口が減少したから店舗を統廃合せざるを得ないと説明されているが、金融機関の支店が地域からなくなるとさらに人口が減少することになる」と指摘。全農協労連の星野書記次長は、「地域金融機関の合併再編や店舗の統廃合で、年金生活者が年金を払い出す金融機関窓口がなくなってしまう地域も出てくる。これは地域経済活性化以前の国民の生活権にかかわる問題でもある」と指摘しました。
こうした参加者の発言を受けて全国金融共闘の浦上議長は、「金融機関が社会的役割を果たすことと、金融機関が利益最優先の経営をすることとは相反する側面を持つ。先ほどの金融庁からの回答はその相反することの両方をめざすことが求められていることから、さまざまなゆがみが生じている。利益を上げることを追求すること自体が悪いとは言いわないが、それが金融機関の社会的役割を果たすことにつながっているのか、消費者利便につながっているのか、真逆のことになっているのかぜひ認識していただきたい」と訴えました。