2020年の春は新型コロナウイルス感染の拡大、パンデミックの広がりで世界中が前年には予想もしなかった状況となり、日本でも緊急事態宣言が出され、金融機関も大きな影響を受けました。
全国銀行協会は3月12日に「新型コロナウイルスへの対応に関する申し合わせ」を公表。新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者むけに、緊急相談窓口設置など事業者支援を申し合わせ、同時に「(金融機関の従業員等に)感染が判明した場合には…原則として速やかに公表するとともに、感染拡大の抑制に向け適切に対応する」としていました。
メガバンクは3行で11職場、地域銀行は14行19職場の感染を公表
実際に、金融機関は従業員の感染が判明するとホームページ等で公表しています。メガバンクでは三菱UFJ銀行が、メディアでも報じられた愛知県の江南支店をはじめ、東京都内の3支店と子会社1社。みずほ銀行は東京都内の4支店、三井住友銀行は京都の1支店と大阪府の法人営業部2ヵ所の感染判明を公表。地域銀行では14行が支店など19の職場、信用金庫は6金庫での感染判明を公表していることが確認できます。感染者は正規雇用だけではなく契約社員や派遣社員、店内清掃業従業員、待機中の新入行員なども含まれ、いずれも、支店内など関連部署の消毒、濃厚接触可能性のある行員の自宅待機、顧客への連絡などが行われています。
三菱UFJ銀行は2月27日に「昨夜、当行江南支店(愛知県江南市)に勤務している行員1名が、新型コロナウイルスに感染していることが判明」と公表し、メディアが一斉に報道。銀行は、支店行員約40人のうち、濃厚接触の可能性のある行員10人に自宅待機を命じ、行員10人の代替え要員を送り込み、支店内やATMの消毒作業を行い、27日(木)午前9時から通常通り営業しています。
支店従業員を2週間自宅待機に
伊予銀行(本店愛媛県松山市)は3月2日に、40代女性行員の感染を公表しています。3月2日、愛媛県の中村時広知事が「40代女性の会社員」として公表したものを、同日、同じ県庁で銀行が記者会見を行い、伊予銀行の大塚岩男頭取(当時、現会長)が、伊予銀行愛南支店の行員であることを明らかにしています。この行員は参加したライブ会場で集団感染があったことを報道で知り、自ら銀行や保健所に報告し、銀行が緊急の対策会議を開き対応を確認しています。
豊和銀行(本店大分県大分市)では、4月6日上野支店(大分市)の行員1名(男性)が感染し、県は「会社員」としていましたが、銀行は豊和銀行員であることや支店名を明らかにしています。同じ支店の他の行員は検査結果が陰性でしたが、顧客の不安を考慮して支店行員を2週間自宅待機としました。翌7日は支店を休業としましたが、中小・零細企業の資金繰りや融資などの相談が多くよせられていたので、本部と最寄り支店の行員によって4月8日から営業を再開しています。(詳細は金融ネットHP調査レポート「従業員のコロナウイルス感染に金融機関はどう対応したか」)
集会・団交が困難な下でも要求実現目指す
金融機関は、緊急事態宣言の発令や感染拡大防止のための外出自粛要請を受けて在宅勤務、テレワーク、職員を班別に編成して曜日ごとの交代出勤、時差勤務などの対応を取りました。これに対して、金融労連など金融労組は労働条件の改悪を阻止する労使協議等を呼びかけました。(当金融共闘ホームページ「新型コロナウイルス感染拡大防止の下で職場と労組の取り組み」)
機関誌「金融労連」は6月10日号で、職場からよせられた実態を報じています。感染防止のために学校が休校となり児童をかかえる労働者が仕事を休まなければならなくなった場合には、職場によって「5日間を特別休暇とし、不足分は有給休暇とする。パート・嘱託職員を含む」「小学生を持つ職員は特別休暇扱いとし、契約社員・嘱託職員を含む」などが報告されています。労働者本人が体調不良であったり、コロナウイルスにり患した場合の対応については「銀行から自宅待機を要請された場合、有給の特別休暇とし、嘱託・パートを含む」「体調不良による欠勤は年次有給休暇とし、コロナに感染した場合は傷病休暇。家族および職場での濃厚接触者は特別有給休暇とする」などとなっています。
緊急事態宣言や外出自粛に対応して、金融機関は曜日ごとの交代出勤、時差出勤等を行い変則的な労働時間、勤務体制となっています。
これに対して、金融各労組は労働条件の不利益変更を認めず、また集会や団交の開催が制約される下で、要求実現に取り組んでいます。